あの夏の少年はいま

たまに、小学校の頃のある夏休みの、ある日を思い出すことがあります。

 

当時は、2,3つ上の年上とよく遊んだものです。実家の近所に、同じ学校の他学年層がバランスよく集まっていたので、どこへ遊びに行くにも常に一緒でした。

 

あれは小3の頃だと記憶してますが、夏休み中は学校のプールが開放されていて、たまにみんなで行ってました。

 

その日、プールで遊び終わったあと、みんなで更衣室で着替えていたら、小6のある先輩(このときはまだ先輩という概念はないが)の着替え最中に、単3電池1個、コロンと落っこちてきました。

ズボンのポケットかなんかに入っていたのだと思うけど、小学生は、というか男子という生き物は、事実が不確かであっても、拡大解釈しておもしろい方向へストーリーを持って行きたがる(オチをつけたがる)本能があるもんで、「こいつのパンツから電池が出てきたぞ!」と騒ぎます。「電動パンツ」というあだ名を誰かがつけました。きっとその中の小6の誰かだと思いますが。そこからそのコミュニティ内で、彼を「電動パンツ」と呼ぶ文化ができあがりました。

 

ぼく自身もそう呼んでました。彼の名前がそもそもわからなかったというのもあります。でも一番の理由は、「電動」という、最高学年の科学分野で習うであろう、ちょっと難しめのワードに、パンツという外来語。その2つが組み合わさったことで生まれた響きの良い(ぼくの中での)新出単語。みんなでゲラゲラ笑い合った夏の日でした。彼がそのとき、どう感じていたかはわかりませんが、今思えば、小学生にしてはちょっとイジリの度が過ぎていたなぁと反省してます。

 

その日以外の彼との思い出は、自分の記憶に出てくることはありません。

過去の記憶は脳の構造上、どうしても断片的に残る物で、裏を返せば、印象の薄いものからどんどん消えていきます。おそらく、その日以降も、関りはあったのだろうけど、インパクトの薄い出来事ばかりだったのだと思われます。

 

でも、このブログを書いている最中、ふと彼に関することが蘇りました。

・手の平の皮が剥けていてものすごくボロボロ

・そのボロボロの手で包み込んでいた一匹の雀をなぜか見せくれた

・彼の家が斜めに倒壊していた(イメージがある)

 

真相を今さらながら知りたくなります。

特に、倒壊した家なんて、今考えればどう考えてもおかしいですし。

 

でも、彼の名前は知らないし、その世代の人とは一切繋がっていないので、自分で調べようがない。とはいえ、この超情報社会において不可能なことはないので、知ろうと思えばできなくもないが、いろんな労力を考慮すれば「いや、いいです、大丈夫っす」となります。「本気をだせばいける、ただやらないだけ」という状態で、とてつもなく知りたいという探求心はないみたい。

 

イマジナリーフレンドなんてこともあり得ますしね。

 

この件のみに関わらず、架空の記憶であったとしても、時間があればこちらのブログに書き綴っていこうと思います。自分の貴重な少年史が着色される前に。

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