『公開処刑人 森のくまさん』を読んで

可愛いカバーとタイトルをしてんのに、内容がただただシリアルキラーチックな小説でした。このちょっとグロい感じ、山田悠介さん的な感じあって、悪くない。

概要はこんな感じ。

公開処刑人「森のくまさん」。犯行声明をネットに公表する連続殺人鬼だ。捜査本部は血眼で犯人を追うが、それを嘲笑うかのように惨殺は繰り返され、世間は騒然となる。殺されたのはレイプ常習犯やいじめを助長する鬼畜教師など、指弾されても仕方ない悪党ばかりで、ネットには犯人を支持する者まで出始めていた。一方、いじめに苦しみ、自殺を図ろうとした女子高生の前に、謎の男が現れ…。

 

『ある日、森の中で出会ったら最後、逃げたとしても、いつでもあとからついてくる。まるで実体のない亡霊だー』

本のラストにこう書かれていたのですが、「あぁ、森のくまさんてそういうことか」と妙に納得しました。

 

レイプや度の過ぎたいじめ。どれも悪い行為です。

世の中を浄化するために現れた森のくまさんは、悪いことをした人を仕留めていきます。まさに私刑人です。悪いことをした人を周りの人や国は正当に裁かない、それなら自分が裁く。

 

子どもの頃はぼくもそう思ってました。「おかしいだろ、その判決!」と。「ぼくなら絶対もっと厳しい処分にしてやるよ!」と母にもその怒りをぶつけてました。

でも、大人になるにつれて、そういう感情はどこかへ行っちゃいました。「おかしい!」とは思う。でも、「自分がやってやる!」とはならない。「世の中そういうもんだ」と割り切るようになりました。

きっと、人間はこうやって成長していくのが自然なんだと思います。物事を知れば知るほど折り合いをつけるようになる。

 

そういう意味では、森のくまさんは、折り合いをつけれなくて、現状に一石を投じたかったのではと少し同情もします。言動にはかなり異常性がありますが、とはいえただの「やばい犯罪者」として片づけるのもなんだかしっくり来ない。

殺人鬼という犯罪者ではなく、法を犯した「犯法者」なのだろうね。